“おいも”の新たな魅力を心斎橋で発信。らぽっぽファーム心斎橋店、“おいもと抹茶”の新シリーズの舞台裏【#企業インタビュー】

おいもスイーツ専門店『らぽっぽファーム』。大阪人のみならず、関西に住む人なら一度はらぽっぽのおいもスイーツを食べたことがあるのではないでしょうか。

らぽっぽファーム心斎橋店では、2025年5月より“おいもと抹茶”をテーマにした新シリーズがスタートしました。

今回は、らぽっぽを運営する白ハト食品工業株式会社で商品企画や広報を担当する平島さんにインタビューを行い、新しい挑戦への背景やコンセプト設計、マーケティング視点での戦略についてお話を伺いました。

白ハト食品工業株式会社
6次化マーケティング開発本部 係長
平島可奈子さん
入社後、らぽっぽファームのEC事業を担当。現在は商品企画をはじめ、販促・デザイン・SNS運用・イベント企画など、店舗やブランド全体のPRや世界観づくりに携わる。また、Instagramの個人アカウント運用で培った経験を活かし、SNSの発信戦略にも精通している。

おいもスイーツ専門店『らぽっぽファーム』

『らぽっぽファーム』は、1987年の創業より国産のさつまいもを使ったスイーツを展開しています。土づくりから収穫まで全国の自社農園・契約農園で丁寧に育てたさつまいもを、収穫後すぐ専用の貯蔵庫でじっくりと熟成。甘みを最大限に引き出した状態でスイーツの材料として使用することにこだわりを持っています。

『らぽっぽファーム』の看板商品である『焼きたてポテトアップルパイ』をはじめ、さつまいも本来の味わいを楽しめるスイーツがたくさん。さつまいもの優しくて甘い香りが漂うお店では、毎日たくさんの“おいもスイーツ”が丁寧に焼き上げられます。

らぽっぽファームは、スイーツブランドの運営にとどまらず、さつまいものオリジナル品種の開発や栽培、農業体験・製造工場・レストラン・カフェが一体化した複合施設『らぽっぽ なめがたファーマーズヴィレッジ』(茨城県)の運営など、「自然の恵みをそのままに」「素材にまっすぐ向き合う」という姿勢を軸に、農と食、そして人をつなぐ場を全国に広げています。

グルメの街・大阪ミナミで、“おいもと抹茶”を楽しむ新たな挑戦

『らぽっぽファーム心斎橋店』は、“おいもと抹茶”をテーマにした店舗として新たな一歩を踏み出しました。

日本を代表する食材として、若者やインバウンド層にも高い人気を誇る抹茶。そこに、らぽっぽこだわりのさつまいもを掛け合わせることで「より多くの人においもの美味しさを知って欲しい」という想いが、今回の新シリーズ発売のきっかけだといいます。

――今回、心斎橋店が“おいもと抹茶”をテーマにしたお店になったのはなぜですか?

心斎橋というエリアは、観光や仕事で国内外からたくさんの人が集まる場所です。らぽっぽが長年大切にしてきた“日本のおいも”のおいしさを、まだらぽっぽのことを知らない外国人の方や若い世代にもお届けしたい。そのための入り口として選んだのが“抹茶”でした。これまでも抹茶を使った商品は販売してきたのですが、お店として“おいもと抹茶”といった特定の素材を打ち出したシリーズ展開は初めての試みです。おいもとの相性が良く、たくさんの人に知られている“抹茶”をきっかけに、おいもスイーツをもっと身近に感じていただけるといいなと思っています。

――おいもと抹茶をテーマにした新商品を開発するなかで、感じられたことや難しかったことは?

商品開発を進めるなかで改めて感じたのは、抹茶好きの方は「抹茶味」ではなく、抹茶そのものの風味をしっかり楽しみたいと思っていらっしゃるということです。最近では、抹茶の濃さが選べるスイーツのお店も話題になっていて、抹茶の深い味わいを求めるニーズが高まっていることを実感しました。

だからこそ、私たちの商品も、抹茶の風味そのものを存分に楽しめることが何より大切だと考えました。加えて、私たちはおいもの専門店でもあるので、抹茶とおいも、どちらの素材の良さもしっかりと感じられ、互いを引き立て合うような味にすることが重要と考えました。

そのバランスを見つけるのがとても難しく、素材選びから分量の微調整まで、開発チームが何度も試作を繰り返し、微調整を重ねてようやく今の形にたどり着きました。

こうした感覚は、おいも好きな方とも共通しています。「おいも本来の甘さを楽しみたい」「素材の味を感じられるスイーツが好き」といったお声は、これまでらぽっぽの商品をご愛用いただいてきたお客様から何度もいただいてきました。

私たちが目指したのは、そうした声に寄り添うような、抹茶とおいも、どちらの良さもまっすぐ伝わる味わいです。

――抹茶以外に、新シリーズの候補に上がった食材やコンセプトはありましたか?

店舗の立地を踏まえて、当初は「ワンハンドで楽しめるスイーツ」といった、食べ歩きに特化したスタイルの提案もありました。ただ、らぽっぽのブランドをまだご存じない方や海外からのお客様、そして今のメイン層よりも若い10代・20代の方々にももっとアプローチしていきたいという思いがあったため、国内外で知名度の高い素材である抹茶を選びました。

実際、「#抹茶スイーツ」といったハッシュタグはSNSでも反響が大きいですし、毎年5月頃に展開している抹茶の限定商品もお客様からとても好評をいただいています。“和スイーツ”というカテゴリーで見ても抹茶とおいもは相性がよく、らぽっぽらしさを活かせる組み合わせだと感じました。

――新シリーズを展開するなかで、どのようなことをお客様に伝えたいですか?

らぽっぽでは、100%国産のさつまいもを使用することにこだわっています。素材本来の美味しさをしっかり味わっていただきたいという思いと、自社・契約農園で丁寧に育てた国産のおいもならではの安心感は、私たちの大きな強みです。

また、今回使用している抹茶には、香り高く、色鮮やかな宇治抹茶を厳選しました。さつまいもの風味を引き立てながら、和素材ならではのやさしい美味しさを楽しんでいただける仕上がりになっていると思います。

こうした一つひとつのこだわりが、お客様にとっての「安心して食べられるスイーツ」につながっていれば嬉しいですね。

――らぽっぽのお店は、製造工程が見えるライブ感も楽しみの一つ。心斎橋店で販売する3つの新商品も、実演形式がとられていますよね。

はい。らぽっぽでは、“実演販売”をブランドの大切な要素として位置づけています。看板商品の『焼きたてポテトアップルパイ』をはじめ、お店で一つひとつ丁寧に焼き上げたおいもスイーツを提供しているのが私たちのコンセプト。せっかく足を運んでくださるからこそ、見て楽しめる体験も大事にしたいので、ほとんどの店舗に実演台を設け、商品を選んでいただくときやお待ちいただいている間も、らぽっぽの“おいもスイーツの世界”を楽しんでいただけるようにしています。

心斎橋店の3つの新商品も、ご注文をいただいてから茶筅で抹茶を一杯ずつ点てたり、モンブランのクリームを機械で絞って盛り付ける様子を目の前でご覧いただいたりと、ライブ感のある演出でご提供しています。

らぽっぽらしさをライブ感が味わえる、“おいもと抹茶”の新商品

“おいもと抹茶”がテーマの新シリーズがスタートした心斎橋店。『おいもと抹茶のモンブランパフェ』『おいものソフトクリーム−宇治抹茶粉がけ−』『おいも抹茶ラテ』の3つの新商品の特徴や企画・開発の工夫を教えていただきました。

・おいもと抹茶のモンブランパフェ

らぽっぽ人気No.1商品の『ポテトアップルパイ』を使用し、安納芋を使用した濃厚なさつまいものソフトクリームの上に抹茶モンブランをたっぷり。つぶあんやもちもちの白玉、カリッと食感の『おいも蜜けんぴ』をトッピング。食べ応えのある商品です。

販売価格が1200円(+税)と、らぽっぽの商品ラインナップのなかでは上位となりますが、この価格でもご納得いただけるよう、トッピングも贅沢にして、見た目もボリュームも満足感がある商品を目指しました。また、どれだけ新しい素材や味に挑戦しても、らぽっぽを愛してくださるお客様にもご満足いただけるよう、カットした『ポテトアップルパイ』を使用しています。ご試食いただいたモニター様からは、「商品がちゃんと活かされていて嬉しい」というお声をたくさんいただきました。

・おいものソフトクリーム-宇治抹茶粉がけ-

甘みの強い安納芋を使用した『おいものソフトクリーム』に、香り高い宇治抹茶パウダーをふんだんにかけた、抹茶の持つ奥深い香りとほろ苦さ、さつまいもの甘みが引き立て合う、口あたりなめらかなソフトクリーム。

もともと心斎橋店で販売していたおいものソフトクリームに、宇治抹茶のパウダーをふんだんにかけて仕上げました。素材の良さも引き立て合うよう抹茶パウダーの種類や量を何度も調整しました。

抹茶そのもののアイスにする案もありましたが、だからこそ実演形式にこだわり、視覚的にも楽しんでいただけるよう工夫しました。目の前でたっぷりと抹茶をかける瞬間は、お客様の反応もとても良く、動画に撮ってくださる方も多いんですよ。

・おいも抹茶ラテ(ホット/アイス)

おいもソフトクリームをベースにしたミルクに濃厚な抹茶を注いで作られる、らぽっぽならではの抹茶ラテ。ご注文後、1点1点スタッフが丁寧に抹茶を点てるライブ感を味わえる商品。

おいもと抹茶のバランス感にとても苦戦した商品です。一般的な抹茶ラテであれば、抹茶の濃さや風味の強さが主役になりますが、らぽっぽの抹茶ラテとして出すには、おいもの風味もしっかりと感じていただきたいと考え、シロップで甘みを調整するのではなく、おいもソフトをミルクに混ぜて、おいもの自然な甘さを活かした味に。

社内での試飲でも意見はさまざまで、「もっと抹茶を濃くしてほしい」という抹茶好きの声もあれば、「いやいや、おいも感をもっと出してほしい」といったおいも派の声もあって。まさに“抹茶派”と“おいも派”のせめぎ合いの中で生まれた商品一杯です。

“おいもと抹茶”の世界観をどう届ける?リブランディングとPRの舞台裏

“おいもと抹茶”という新しい世界観を表現するため、商品開発はもちろん、店舗空間やビジュアル展開にまで細やかな工夫が凝らされています。今回の新シリーズリニューアルにあたっては、ブランドの方向性設計から商品撮影、SNS戦略まで、無色透明が全面的にサポート。らぽっぽらしさを大切にしながら、“新しさ”をどう届けるかを一緒に模索しました。

――認知を広げるため、PR方法にはどんな工夫をされましたか?

これまでもSNSを活用した発信は積極的に行っていましたが、インフルエンサーさんにPRをお願いするような施策はほとんど行ってきませんでした。ありがたいことにブランドとしての認知はあるものの、新しいお客様、特に10代・20代の方たちにどう届けていくかという部分では、まだまだ戦略的に取り組めていなかったと思います。

そこで今回は、大阪や心斎橋を中心に発信力のあるインフルエンサーさんを探し、SNSでの発信と連動して、商品提供によるPRをご依頼しました。ただ商品を渡して発信をお願いするのではなく、一組一組きちんとご挨拶をしてお会いし、お話を聞かせていただく時間をつくりました。貴重な時間を割いて来ていただき、PRしてくださるからこそ、リアルな声を受け止めたかったんです。

しかも今回は、有償ではなく商品提供という形です。それでも来てくださるのは、“らぽっぽが好きだから”という想いがある方たちの。そういった思いにしっかり応えられるよう、1人ひとりとのコミュニケーションを大切にしました。

――インフルエンサーさんの反応はどうでしたか?

今回は、親子やご家族、お友達同士など、大切な人と一緒に来てくださる方がとても多かった印象です。世代を超えて楽しめるブランドでありたいという私たちの想いが、自然と伝わっているのだと感じました。

また、「娘がらぽっぽの商品が大好きで」や「子どもの頃から食べてます」といった声を直接聞けたことも印象的でした。商品をただ紹介するのではなく、思い出や誰かとのつながりの中で選んでもらえている。そんな“ぬくもりのあるブランド”として見てもらえていることが、とても嬉しかったです。

これまでも、これからも。“らぽっぽ”が大切にしていきたいこと

――今回の“おいもと抹茶”という新しい挑戦を通しての課題や目標は?

“おいも屋さん”であるという原点を大切にしながら、時代に合わせて柔軟に進化していきたいという思いです。

これまで長年らぽっぽを愛してくださっているたお客様にはもちろん、これまであまりおいもに親しみのなかった方や、今のトレンドを楽しむ世代の方にも届くように、見た目にも楽しめる“映えスイーツ”や新しい世界観にも挑戦しています。

でも、どこまでいっても主役はおいも。“素朴だけど丁寧で、素材にこだわったらぽっぽらしさ”は変わりません。どんな世代の方にも、おいもを通じて小さな幸せを届けられるように、挑戦を続けながらも変わらないあたたかさを届けていきたいと思っています。

【取材協力】

らぽっぽファーム心斎橋店(白ハト食品工業株式会社) 

ブランドサイト:https://lapoppo.com/
Instagram:@lapoppofarm_oimo

無色透明 編集部

執筆

無色透明 編集部

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